• Avocat Japonais à Tokyo

7時間ほど爆睡して目を覚ます。

腕に巻き付けてあった貴重品入れの小型ショルダーの中身をごそごそ確認する。財布、パスポート、UIA大会に関する払込みの証明書、Eチケットは全部無事のようだ。

共用の個室トイレの中にシャワーもあるので、他の宿泊客が目を覚ます前にシャワーを済ませた。こういったホステルに宿泊した経験がないので、ややビビりすぎかもしれないが、大荷物のキャスターごとシャワールームに持ち込む。

宿の共用キッチンにて簡単な朝食を済ませる。

本日現地時間夕方6時に再びバラハス空港に向かい、ポルトに向けて搭乗する予定だった。現在午前8時。1日の予定をキッチン付近のソファにて考える。

たぶん20キロを超えるであろうキャスターをゴロゴロさせつつ、やはりヨーロッパに来たんだなぁとの所感を持つ。からっと晴れて、とても心地よい。

比較的自由に時間調節ができそうなので、

プラド美術館を訪れてみた。

プラド美術館のほか、かの有名なゲルニカが所蔵されている王妃ソフィア美術館を含む3つの美術館に、1年間何度でも入館できるという年パスを購入した。

ヨーロッパの大規模な美術館では、1日で全展示を鑑賞しきるのは現実的ではない。1年前にサンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館を訪れた時にこう確信してからは、気に入った絵画があったら基本的にその作品に集中するようになった。

プラド美術館では、入り口から館内のカフェのところで右折してすぐの展示室にその絵はあった。

ポール・ボードリーの真珠と波

いやー美しい…

遠目に見た際の肌の質感で早くも魂を抜かれる。

力みを全く感じさせない、余裕のある表情も素晴らしい。

同じ展示室に何分もいるのも変なので、ほかの絵画も見には行くが、「やはりもう一度見たい…」、「もう一度…」と同じ展示室に戻ってしまう。

昼食休憩のため、いったん美術館を出る。年パスを買うと、こういうとき気楽に休憩を挟めていい。

あー、それにしても、美しー…

先ほどまで鑑賞していた作品の余韻に浸りつつ、横断歩道前で信号待ちをしていたときだった。

何者かが、私の腰回りを撫でている…?

最初思ったのは、「まさかの痴漢か?」だったが、0.1秒もかからず

「そんなわけあるか、スリだー!!」と気づいた。

思い切り体を反転させると、そこにはカップル風の男女。男のほうは、ディズニー映画に出てくるイケメン風小悪党といった風貌だ。

たすき掛けにしていた小型のショルダーバッグを確認すると、金具で留めるフラップは全開。貴重品を収納していた区画のチャックは3分の2ほど開けられていた。

あわてて、財布、Eチケット、パスポート、UIA大会参加費用の払込証、と貴重品の点呼をする。よかった、全員無事なようだ。

男は、ちっと舌打ちして去っていった。

仮に、ここでパスポートやらなにやら掏られていたら、ポルトに到着することすらできず、日弁連からの費用補助もなし、ポルトの宿もぱーだった。

気を取り直し、簡単な昼食をとると、再び何事もなかったかのように、真珠と波の展示室に戻った。実物の良さは、画集やネットの閲覧では得られない。ことに、目当ての絵画がユーラシア大陸を超えたところに行かなければ見られないとなると、未練・名残惜しさも並大抵ではない。美術館職員も若干怪訝な目で私のことを見ていた気もするが、こちらは魂を抜かれているのでどうにもならない。

そうはいってもポルトへの搭乗時刻も迫ってきたので、プラド美術館を後にした。

「あー、ポルト行きの航空券はご購入されているんですけどね、荷物の運賃が支払われてないですねー」

出たよ、LCCのこのパターン…

片道60ユーロ、往復90ユーロだがどうするか、とのことで、支払わないという選択肢はないので、カードを切る。まあ、ポルトガルとの往復料金+6泊の宿泊代金込みで3万円程度しか支払っていないので文句を言えたものではないが…

ようやくポルトの空港に到着した。