• Avocat Japonais à Tokyo

 昨年10月1日付で、函館弁護士会から東京弁護士会へ所属先を変更した。

 これに伴って、やってみたいことがいくつもあった。

 一つは、高等裁判所又は最高裁判所における刑事弁護だ。

 国家から配転される国選弁護事件は、基本的に所属する弁護士会に対応する地方裁判所の案件に限られる。

 そのため、函館弁護士会に所属していた当時は、第一審である函館地方裁判所の案件しか国選弁護人としては担当できないのである。

 これが、札幌弁護士会所属であれば、札幌高等裁判所の案件は担当できるのだが、函館には高等裁判所もない。

 よって、函館弁護士会に所属していた6年弱の間、約60件の刑事弁護を担当したものの、例外なく第1審の事件だった。第一審判決後どのような手続が実施されているのかは知る由もなかった。

 翻って東京弁護士会。対応する裁判所としては、東京高等裁判所、最高裁判所が存在するので、第2審、第3審の刑事弁護も担当することが可能である。

 そこで、本投稿時点で、控訴審(東京高等裁判所)の国選弁護を2件、上告審(最高裁の事件)の国選弁護を3件、早速引き受けた。

 どの案件も非常に興味深かった。

 何より、他の弁護士が第1審又は第2審でどのような弁護活動をしたのかが読めるのがいい。

 もちろん、すでに第1審又は第2審が終結した後の記録なので、A4の書類が1000頁から2000頁くらいあるのも普通だ。

 控訴審又は上告審の基本的な報酬は9万円(源泉徴収前)であることを考えれば、「コスパ」だとか「割のいい仕事」といった観念からすると、やっていられない仕事といってもよいだろう。

 しかし、これが実に面白いのだ。「あーこの1審の先生(弁護士のこと)、もうちょっとこれやっといてくれればなー。」、という感想になることもあれば、「おー、この先生すごいな…そうか、こういう方法があるのか…」等々、ものすごく面白い。

 ところで、記録はどこで読むのか?

 上告審、つまり最高裁判所の事件は、最高裁判所の記録閲覧室で読む。

 厚さ10センチ程度のファイルが少なくて2,3冊、あるいは8冊前後ということもある。

 これをメモを取りながら読む。事前に第1審と第2審の判決コピーを渡されているので、第1審と第2審に誤りはないか、法令違反、判例違反はないか、という観点からひたすら読み進める。

 記録が面白すぎるので、気づくと3,4時間が経過していることもしばしばだ。

 そして、事務所に戻る。

 どんな些細なものでもいい。鉄壁のようにそびえる第2審判決に突っ込みをいれないといけない。第1審及び第2審の弁護人の主張、被告人本人の供述を参考に、何かいえることはないか、必死にひねり出す。

 草案ができると、被告人本人の感想を求める。

 ところで、被告人ってどこにいるの?という疑問もわいてくる。

 もちろん、第2審までに執行猶予となっている場合、娑婆にいる。よって住所地におくる。

 では実刑判決を宣告された被告人はどこに?

 正解は、未決囚の立場で、第2審を言い渡した高等裁判所の所在地にある拘置所又は刑務所である。

 最高裁は、書面審査しかしない。証人尋問は実施されない。「異議あり!」とかそういう風景は展開されない(ただし、死刑事件、判例変更の場合等、若干法廷での弁論が実施されることはある。)。

 なので、福岡高等裁判所で第2審判決を受けた場合、福岡県内の拘置施設に被告人はいる。高松高等裁判所が控訴審判決を宣告したのであれば高松刑務所といった具合である。

 そして、そういった刑務所などに私が作った書面(上告趣意書というタイトルである。)について、手紙やFAXでコメントが入る。

 その後、やはり本人と面会をして、最後の意思確認をしたくなるものである。

 すると、例えばこういう場所に行くことになる。

 これよって得られる報酬はといえば、

 かけうどんの小である。

 いや、いくら讃岐うどんが美味いといってもそれだけでは…

 ご安心いただきたい。

 骨付き鳥もいただいた。悔いはない。

 なお、高松刑務所へ接見に向かわれる先生方へ。

 高松駅前からタクシーでは片道1,120円でした。琴電なら190円程度だったはず。

 高松空港行きのリムジンバスは、JRホテルクレメント高松から乗車するのがお勧めです。駅前から乗ろうとすると座れません。まして途中のバス停からだと、何本からバスを見送る羽目になります(ただし、そのためか東京行きの飛行機に間に合うバスが3本ほど連続で発車します。)。